研究・勉強・仕事

年の瀬なので,少しは今年を反省してみる。 誰もがそうであるように,2023年も色んなことがあった。 まず,修士論文の口述試験があった。 修士論文は提出した当初はあまり好きではなかった。 論文としての出来は今ひとつのように思われたからである。 その意…

法(学)のわかりにくさと法社会学

0 経緯 以下に記す小論文は,2023年度Sセメスター「法学以外を専門とする学生のための法学入門」のレポートである(注1)。この小論文の公表を快諾してくださった授業担当教員の白石忠志教授に感謝の意を述べたい。 この小論文をブログに公表しようと思った…

学振DC1申請書採択体験記

この季節になると,修士2年の会話で「学振」の話題がのぼるだろう。「学振」とは,日本学術振興会特別研究員のことである。簡単に言えば,月額20万円の奨学金と,最大年間150万円の研究費が支給される身分のことを指して,「学振」なり「DC1」という言葉が飛…

フランスにおける人格権:私生活の尊重を求める権利と民事責任との関係

民法演習の報告の材料として,フランスの人格権を扱う文献を読んだ。 その中のPascal Ancel, Droits des obligations (Dalloz, 2020), pp.390-394を訳出した。 不法行為法の構造としてはフランス法を継受している面もある日本にも何かしらの示唆を得るもので…

「契約」という翻訳

Ⅰ はじめに 日本が近代化を目指し,西洋列強から法制度を継受(輸入)した際に,輸入した概念・観念を日本語で表現するのに多大な苦労を要したことは,よく知られている話である。有名な話としては,福沢諭吉がright(Recht,droit,regt)をどのように訳し…

仙台旅行

夏休みが始まり1ヶ月ほど札幌の実家に戻ったのち,いざ東京に帰るついでに,仙台に行ってきた。 仙台は小6の時に行ったきりで,旅行という旅行もしていなかった。 そもそも東北を旅行するという発想がなかった。 しかし札幌と東京の間に東北があることに気づ…

グンター・トイブナー「グローバル・ブコーヴィナ──越境的法多元主義の発生に向けて──」訳(下)

グンター・トイブナー「グローバル・ブコーヴィナ──越境的法多元主義の発生に向けて──」訳(上) - pompombackerの徒然 グンター・トイブナー「グローバル・ブコーヴィナ──越境的法多元主義の発生に向けて──」訳(中) - pompombackerの徒然 Gunther Teubner…

住居変遷(回帰?)

北大を卒業して東京に引っ越すことになった。 札幌の開放的な空気感が好きだった僕には名残惜しかったが,東大は東京にあるのでしょうがない。 実は東京には中学のとき住んでいた。 しかも,東大と同じ文京区に住んでいたのである。 そのため,土地勘はある…

札幌を去る

明日から札幌を去り東京での生活が始まる。 札幌を離れるということは僕にとって親元を離れるということだ。 札幌を離れるということは僕にとって大学を卒業するということだ。 北大にはそういう卒業生が一定数いるのではないだろうか。 大学では愉快に遊ば…

4年2学期の自己評価

この学期は授業を全く取らなかったので成績云々で語ることはできない。 そこで,自らの赴くままにやっていこうと思った。 4年2学期の目標 - pompombackerの徒然 2学期が始まった当時に次の3つを目標に掲げていた(忘れていた)。 ①ドイツ語の勉強 これはウェ…

グンター・トイブナー「グローバル・ブコーヴィナ──越境的法多元主義の発生に向けて──」訳(中)

グンター・トイブナー「グローバル・ブコーヴィナ──越境的法多元主義の発生に向けて──」訳(上) - pompombackerの徒然 前回に引き続き,Gunther Teubner, “Globale Bukowina : Zur Emergenz eines transnationalen Rechtspluralismus” in Rechtshitorisches…

グンター・トイブナー「グローバル・ブコーヴィナ──越境的法多元主義の発生に向けて──」訳(上)

「生ける法」議論の系譜を現代に辿っていくうちに,Gunther Teubner, “Globale Bukowina : Zur Emergenz eines transnationalen Rechtspluralismus” in Rechtshitorisches Journal 15(1996), S.255-290という論文があることを村上淳一「歴史的意味論の文脈に…

北大法学部がおすすめな理由

先週共通テストが実施され,今は出願期間に入っているだろう。 そこで,北大法学部生自身が北大法学部をおすすめする理由を述べていきたいと思う。 もちろん,共通テストの成績云々により難しい側面があることは否めないが,後述するように北大法学部に入る…

最近いただいたもの

大学院進学祝いやなんやらで,いろいろな人から本を頂いた。 もちろんお一人お一人にお礼を申し上げたのだが,この場でもお礼を言っておく。 頂いたものはすべて本で,今少しづつ読んでいる。 頂いた本は, Niklas Luhmann, “Rechtssoziologie”, 4.Aufl., 19…

我妻栄「私法の方法論に関する一考察」を読む

Ⅰ 我妻のモチベーション 法学部生ならば我妻栄という人物を一度は聞いたことがあるだろう。日本の民法学をほとんど完成させ,現在もなお「伝統的通説」として学説に影響を与えている民法学者である。戦後すぐに行われた民法(家族法)の大改正を行った立法者…

法学部生にオススメの本5冊を考える

質問箱で,以下のような質問が来た。 この質問は,簡単そうに見えて意外に難しいと感じた。 第1に,僕自身はそこまで法学をオススメはしないからだ。 これは「法学って結局なんのためになされているのか」という問いに僕が答えを見出していないからであり,…

東京大学雑記

先週東京大学に行ってきた。 この時期にわざわざ札幌から東京に出向くというのは憚られるかもしれないが,諸々の事情があり行くことにした。 ↑東大本郷キャンパスの赤門。入構規制がかけられているせいか閉まっている 指導(予定)教員からは入構規制がかけ…

就職活動・公務員試験・大学院入試

4年生のこの時期になると周りはほとんど進路を固めている(ロースクールの入試がまだだが)。 僕自身も進路が確定したので,そういう意味で進路について書くにはちょうどいいタイミングだと思う。 正確には,進路そのものよりも進路の入り口・登竜門,すなわ…

4年2学期の目標

今学期は全く授業をとらない。 すでに卒業単位を取り切っているのは言うまでもないが,1学期に経験した「オンライン授業」への不適応さからである。 これから様々な場面でオンラインでの催しが増えると思うから,慣れていかなければならないと思うのだが。 …

4年1学期の自己評価

コロナ禍と言う特殊な状況下にもあり,ゼミは全てオンラインであった。 このような事情で,勉強へのモチベーションが上がらず,ゼミも後半はいい加減な態度で望んでしまった(担当の教員方には大変ご迷惑をかけた)。 結論を言えば,うまく環境の変化に対応…

留学生と別れのランチをする

韓国からきた留学生Kくんが帰るということなので最後の晩餐ならぬ最後のランチを食べた。 僕は最初天ぷらが食べたいと思って天ぷらやさんに行ったらすごく並んでいたので僕らはどこか別のところでご飯を食べることにした。 するとKくんが布袋(北海道で有名…

アイヌ民族政策の途

I はじめに 北海道大学は明治時代に日本が近代国家として成立し,その枠組みが作られる中で札幌農学校 として最初に設立され,現代に至る。このような日本,とりわけ北海道の近代化の裏には北海道 (=蝦夷地)に住んでいたアイヌ民族の排斥がある。北海道大学…

近代において何が法を法たらしめているのか(法学内部における外部的観察の試み)(1)

今月はあまり勉強に集中できなかった。なので今回は復習でもする感じでノートを書いてみる。 題材は法社会学の定期試験の問題から引っ張ってきた。院試の勉強みたいなものである。 参考文献は書くようにするが具体的なページ数は書かないので注意されたい。 …

Joseph Raz, “The Functions of Law” 要約・コメント

法哲学のゼミで法実証主義者であるJoseph Razの“The Functions of Law”の要約の報告をすることになった。この論文はRazのThe Authority of Law (Oxford, 2nd, 2009)所収(pp.163-179)のものであり,初出は1973年のA.M.B. Simpson (ed.), Oxford Essays in J…

休肝

本当は今月「アンジャッシュ渡部叩かれすぎじゃね?」みたいなアホ記事を書こうと思っていましたが政治学入門のレポートの締め切り日を間違えていたこと,6月は31日までと思っていたことで無理でした。来月から頑張ります。

久しぶりにiPhoneを買った

いつもは自分の考えをまとめるためにブログを書いているのだが,今日はフランクにブログを書こうと思う。 今年の4月にでたiPhone SEの新型を買った。 久しぶりにスマホを触ったのでまだ慣れていない。 もともとスマホは持っていた。 機種はiPhone 5c。 7年ぐ…

オンライン授業

コロナ禍により全国の大学ではオンライン授業がなされている。 これは通常の授業,大学に行ってなされる対面の授業,とは異なり家で映像・音声を通してなされる。 ちなみにH大H学部の場合は講義は音声のオンデマンド配信かWebex等のアプリを用いたオンライン…

4年1学期の目標

コロナ禍が席巻している中,着実に進路を決めなければならない。 これに加えて大学院のゼミに潜る(火2・火5)。 オンライン授業の良いところは講義と演習の時間が被っている場合に,やり方次第ではどちらも取れるということだ。 つまり火曜日は外書購読の日…

やはり正義構想論はよくわからない

⒈法=正義? 法と正義の関係についての著作は数多ある。そのうちの一部を紐解くと「法は正義を標榜する」(井上達夫)とされたり,「法システム内の偶有定式」(ニクラス・ルーマン)とされたりする。中には「法の自己破壊的超越物」(グンター・トイプナー…

『職業としての学問』と大学生の特権について

最近のコロナの影響で大学の学位授与式・入学式・オリエンテーションが中止になったり延期になったりして,人ごとじゃなくなってきたという印象を持ちます。 特に附属図書館のオープン・エリア(喋って良いところ)では「お喋り禁止」の張り紙がなされ,そし…